猫侍魂
前置き(300年前) 03:


西の地へと遷都したガナサダイは、国の名をガナン帝国と改めた。
ベクセリアの言葉で「gn」とは、偉大な・高貴な、というような意を示す接頭辞で、何々王、という表記は帝国には無く、たとえば「偉大なるベクセリアの支配者」の口語がカンベクセンである。ガナサダイ、即ち「偉大なるサダイ」は、ベクセリアを捨てたためガンベクセンの名を継がなかったことになる。
もともとは荒地であった現在の帝国領には地名が無く、遷都した頃の民は、自国を指して単に「大いなる我が国」と呼んでいたのである。これをナザムやサンマロウの詩人達が伝え、広まったため、ガナサダイは正式な国名としてそれを採用した。

領土と資源を手にした帝国は急激な富国強兵策を実施、翌年の暮れにはセントシュタイン・ルディアノ同盟軍へ宣戦を布告する。その異常な速度の開墾には、新しく取り立てられた侍中ゲルニックと、その進言で捕らえられた天使の力が深く関わったと言われている。
はじめ帝国は、ダダマルダ山脈を越え、カルバドを掌握すると、すぐに海路でルディアノに侵攻したが、やがて西部戦線は妖女イシュダルとの共闘を選んだ。ゴレオンを司令官として、本来の目的であるセントシュタインに猛攻を開始。ほどなく東セントシュタイン州を制圧、セントシュタインは港と同時にナザム・ダーマ・グビアナへの航路を失った。
これに応じ、セントシュタイン王はまずルディアノへ別の人質を要求した。即ちメリア姫である。
許婚を待つ姫を国から引き離し、強引に娶った王は、それだけでは飽き足らず、やがて悪魔に魂を売った。ルディアノの全ての民の命とひきかえに、いにしえの魔神を召還したのである。
ガナサダイは激怒した。
半分は私怨の、半分は滑稽ながら正義の怒りであった。
事実を隠しルディアノも帝国によって陥とされたと喧伝し、難民を受け入れ肥大するセントシュタインは、エルギオスから搾り取った天使の力を以ってしても陥落せず、ガナサダイは遂に闇竜バルボロスと契約する。皇帝の行き場の無い怒りのとばっちりは、ゴレオンを獄卒に左遷するだけでは勿論済まず、それから帝国はまさに世界中を蹂躙した。
ガナン帝国の版図はセントシュタイン以外のほぼ全てに及ぶ。地と海は魔物で、僅かに残った村々は民の怨嗟の声で満ちた。グレイナルに撃破され、三将と皇帝を同時に失うに至るまでは。


Last-Modified:2009/11/12 (Thu) 00:36:01 | written by koyama | 管理モード | Script by 帰宅する部活 | icon by chat noir

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