猫侍魂



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帝国の守り人


前置き(300年前) 01:


かつてその大陸には、3つの国があった。
エラフィタのような完全な属領ではないにせよ、ベクセリアとルディアノもまたセントシュタインに、形式上は、そして実質的にもいくばくか臣従する立場であった。
魔帝国戦争の起こらぬ頃、肥沃な耕地とそれに伴う国力に恵まれたセントシュタイン王国が、唯一恐れたのは、ベクセリアとルディアノによって挟撃されることのみで、セントシュタインは当然に2国に人質を要求する。
セントシュタインは、地形的にちょうどVの字の底にあり、2国から同時に攻められる可能性があった。
人質達はいずれも幼少期をセントシュタイン城で過ごしたが、セントシュタインが共謀を恐れたために、両者が出会うことは一度もなかった。ルディアノ宰相家の跡取り、後の黒騎士レオコーンは西の塔、ベクセリア公ガンベクセンの息子ガナサダイは東の塔。
謁見の間の扉の前を通る以外に通路のないフィオーネ姫の部屋は、本来は王族の住まいではなかった。歴史は忘れられたが、お転婆だった彼女に手を焼いた両親が、自然にその部屋をあてがったことは、あまりにも正しい。そこが最も見張りのしやすい部屋であることは、今も同じなのである。



ギュメイは、ガナサダイより少しく年長であったが、彼も未だ少年剣士の一人にすぎなかった。
近習として幼い主人の帰りを待つギュメイの熱心な修行は、当時の近衛兵達の目に留まり、やがてその中の一人が、ギュメイに将来の王の護衛としての英才教育を授ける。一撃必殺の剣や、逆に曲者を生かして捕らえるため相手を転倒させる技などは、もともとベクセリア公国の衛兵に秘伝として受け継がれていたものだった。

九つから十四までセントシュタインに幽閉され、成人の歳に戻ったガナサダイを出迎えたギュメイは、あるじの変わりように狼狽えずにはいられなかった。
背が伸びたのと、声変わりはお互い様だが、何よりその瞳が、かつての幼馴染のそれとはあまりにもかけはなれて暗いように思えたからだ。まるで鬼火のようであった。ガナサダイがギュメイの姿を見留め、駆け寄って来たときにはもう、悪寒は消えてしまっていたが、後にギュメイは自分の未熟さを恥じることになる。
まだ遷都の頃は少なからず国を憂う者がいて、奸臣ゲルニックを除かねばならぬとか、ギュメイも義憤とも愚痴ともつかぬことを言い言いしていたが、本当はずっと分かっていたのだ。闇は、命がけで守るべき我がただ一人の主君、その心臓と共にある。自分はそれと知りながら、大義も何もない争いへ、共に堕ちていったのだ。

Last-Modified:2009/10/28 (Wed) 00:58:55 | written by koyama | 管理モード | Script by 帰宅する部活 | icon by chat noir

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